歩いてきた、ところ。

JDになります

居場所

 どうしても帰りたくなかった。

 私の居場所がそこにはないから家にはいたくなんかなかった。聞こえてくる母と妹の声に私はイヤホンをした。それから家を出て何も知らない顔をして街に出ていく。

 

 

 

 

「死にたい。」

 

 

 

 

 私の口癖だ。いや、口癖なんかじゃない。

 でもあまりにも頻度が多いものだから口癖なのかもしれない。

 

 

 私は本当に生きているのかわからなくなるほどに疲弊していた。

 

 無視とはもっとも人間の心理に影響を及ぼすと言われており、極めて簡単かつ残忍な行為だ。それが私の身に降り注いでいた。それは私が悪いのかと言われれば否定はできないものの100%私が悪いかと聞かれたらそれは違うような気がしていた。

 

 

 とにかくそんな中で生きてるものだから生きてるのかわからなくなってしまっていたわけだ。今ならリストカットして血を見ることで生を実感する人たちの言い分も理解できるかもしれない。もっとも、私がリストカットする理由はそこにはなかったのだが。

 

 

 

 街に出てもすることはなかった。なにせここは地元じゃないからだ。親の離婚に伴って引っ越してきたこの地は高校の学区からも外れていて知り合いなど一人もいるわけがなかった。一番近い知り合いですら5駅も離れているのだから。とりあえず電車に乗って見知った地に向かう。電車に揺られて40分。私はずいぶんと遠い地に引っ越してきたんだなということを思い知らされる。

 

 

 その後は決まって本屋に行くかカラオケに行くかだった。ネカフェは好きだったけれどお金のなさに悲しくなった。カラオケは学生のフリータイムで安く利用できた。しかもバイト先だったから社割まで効いて格安で時間を潰すことができた。おまけにWi-Fiや充電器まで完備されているのだから住めと言わんばかりの設備だった。私は何不自由なくそこで1日を過ごすことができた。

 

 

 

 家に帰るととてつもない喪失感に襲われる。

 それから無気力。

 あと希死念慮希死念慮って普段使わないから使いたくなるよね。

 馬鹿の一つ覚え?それでも構わない。

 

 どうして私はこの家にいるんだろう。どうしてこの人のもとに生まれてきたんだろう。どうして私はこんなにも振り向いてもらえないのだろう。どうして私の気持ちは、意見はこの人に届かないのだろう。

 

 思い上がったことを言うのならネットやバイト先でこれでもかと評価されているのにこの人に届かないのはどうしてだろう。相対的に考えればこの人がおかしいと思ってしまうのだが悪い癖だろうか。考え方が子供であれど話の通じる人間ではあると思っている。

 

 だからこそ言いたいことがあるなら言ってくれればいいじゃないか。

 

 死んでほしいなら死んでくれと、

 父親のところにでも戻ってくれと、

 消え去ってくれと。

 

 無視は一番生きた心地がしないのだよ。ただでさえ死にたがりな私をこれ以上殺してどうする。